「個人事業を始めることにしたけれど、税務署には何を出せばいいの?」「開業届さえ出せばいいと思っていた」——船橋で開業される方から、開業前後によくいただくご相談です。
個人事業の開業では、すべての方が同じ手続きをするわけではありません。青色申告を選ぶか、人を雇うか、消費税をどう扱うかによって、必要な届出が変わります。
特に注意したいのが、届出ごとに提出期限が異なることです。2026年から税務署への開業届の期限は変更されました。一方で、青色申告承認申請書は1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内、千葉県への「個人の事業の開始等の報告書」は事業を開始した日から1か月以内です。
この記事では、船橋市で個人事業を始める方に向けて、開業後に確認したい税務手続きと期限を整理します。
この記事でわかること
- 開業後に必要な税務の届出と、それぞれの提出期限
- 2026年から変わった「開業届」の提出期限
- 青色申告承認申請書の期限
- 人を雇う場合・消費税(インボイス)を考える場合の追加手続き
- 千葉県への「個人の事業の開始等の報告書」の期限
- 船橋市で開業する場合の、償却資産・市民税の確認先
開業後の主な税務手続きと提出期限(早見表)
| 手続き | 提出期限 | 提出先 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 開業した年分の確定申告期限まで(2026年から変更) | 税務署 | 事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき事業を始める方 |
| 青色申告承認申請書 | 1月1日〜15日に開業:その年の3月15日まで 1月16日以後に開業:開業日から2か月以内 | 税務署 | 青色申告を選ぶ方 |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 開設の日から1か月以内 | 税務署 | 従業員などに給与を支払う方(開業届の該当欄に記載して提出した場合は、別に提出不要) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | その年の3月15日まで 1月16日以後に開業した場合・新たに専従者がいることとなった場合:その日から2か月以内 | 税務署 | 家族に給与を支払う方 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 随時(提出した月の翌月に支払う給与から適用) | 税務署 | 給与の支給人員が常時10人未満の方 |
| インボイス発行事業者の登録 | 登録希望日は、申請書の提出日から15日以降の日を指定 開業した年の1月1日にさかのぼって登録を受ける場合は、その年の12月31日までに提出 | 税務署 | 登録を検討する方 |
| 簡易課税制度・課税事業者選択の届出 | 適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(開業した年は、その年のうちに提出すれば適用できます) | 税務署 | 消費税の判断が必要な方 |
| 個人の事業の開始等の報告書(千葉県) | 事業を開始した日から1か月以内 | 船橋県税事務所 | 事業を始める方 |
| 償却資産の申告 | 毎年1月31日まで(休日の場合は翌開庁日。1月1日時点の資産が対象) | 船橋市 資産税課 | 事業用の機械・備品などを持つ方 |
【出典:国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など】
【出典:千葉県 新しく事業を始めたのですが、税に関する届出が必要ですか】
国の届出は、期限の末日が土日祝日に当たる場合は、その翌日が期限になります。
開業届の提出期限は2026年から変わりました
「開業届は開業から1か月以内」という説明を、よく目にします。これは2025年までのルールです。
2026年1月1日以後は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出することとされています。たとえば2026年に開業した場合、開業届の期限は2027年3月15日です。
開業届の対象は、国税庁では「新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方」とされています。
期限が延びましたが、後で説明するとおり、千葉県への報告書や青色申告承認申請書の期限は、これより早く来ます。
【出典:国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続】
提出先は、納税地を所轄する税務署です。納税地は、原則として自宅の住所地です。船橋市内にお住まいの場合は、船橋税務署が提出先になります。
【参考:国税庁 船橋税務署】
青色申告承認申請書は期限に注意
青色申告は、承認申請をして初めて受けられます。提出期限は次のとおりです。
- 1月1日〜15日に開業した場合:その年の3月15日まで
- 1月16日以後に開業した場合:開業日から2か月以内
たとえば2026年10月15日に開業した場合、青色申告承認申請書の期限は12月15日です。「年が明けてからでいい」と思っていると、承認申請の期限を過ぎてしまい、その年は青色申告の特典を受けられなくなります。
青色申告の特典として代表的なものが、最大65万円の青色申告特別控除です。ただし、65万円控除は、複式簿記での記帳に加えて、e-Taxでの申告などの要件を満たす必要があります。要件の詳細は、こちらの記事で解説しています。
→ 内部リンク:青色申告65万円控除の要件とは?国税庁の根拠と、10万円になってしまう典型例
人を雇う・家族に給与を払う場合に必要な手続き
従業員を雇う場合や、家族に給与を払う場合は、次の届出が加わります。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
従業員などに給与を支払う事務所を開設した場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を、開設の日から1か月以内に提出します。
ただし、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止」の欄に記載して提出した場合は、この届出書を別に提出する必要はありません。開業時から従業員を雇う予定がある方は、開業届に記載して提出すると、手続きを一つにまとめられます。
なお、給与支払事務所等の開設届出書の提出期限は、開設の日から1か月以内です。開業届で兼ねる場合も、開業後早めに提出しましょう。
【出典:国税庁 A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出】
【参考:国税庁(福岡国税局) 提出が必要な書類】
青色事業専従者給与に関する届出書
青色事業専従者給与を必要経費に算入する場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。
原則として、その年の3月15日までに提出します。ただし、1月16日以後に開業した場合や、新たに青色事業専従者がいることとなった場合は、その日から2か月以内が提出期限です。
なお、届出書を提出すれば、家族への給与がすべて経費になるわけではありません。次のような要件があります。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- その年の12月31日現在で15歳以上であること
- その年を通じて、青色申告者の事業に専ら従事していること(原則として6か月を超える期間。一定の場合は、事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)
- 給与額が、労務の対価として相当であること
【出典:国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除】
【出典:国税庁 A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続】
源泉所得税の納期の特例
給与の支給人員が常時10人未満であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、給与や、税理士・弁護士などの一定の報酬に係る源泉所得税の納付を、年2回にまとめることができます。納付期限は、1月〜6月分が7月10日、7月〜12月分が翌年1月20日です。申請は随時でき、提出した月の翌月に源泉徴収する所得税から適用されます。
【出典:国税庁 No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例】
消費税とインボイスは、開業前に方針を決めておきたい
開業した年は、前々年(基準期間)の課税売上高がないため、多くの場合は消費税の免税事業者としてスタートします。ただし、インボイス発行事業者の登録をするかどうかは、取引先との関係で、開業前後に決めておく必要があります。
- 取引先が一般消費者の場合:インボイスの有無は、あまり問題になりません。
- 取引先が事業者の場合:取引先が仕入税額控除を受けるため、インボイスの発行を求められることがあります。
インボイス登録は、登録希望日から逆算して申請する
インボイス発行事業者の登録を希望する場合は、登録を受けたい日から逆算して申請する必要があります。
- 登録希望日を指定する場合:免税事業者は、申請書の提出日から15日以降の日を登録希望日に指定します。
- 開業した年の初日にさかのぼって登録を受けたい場合:個人事業者の課税期間は、原則として1月1日から12月31日までの暦年です。開業日が年の途中でも、課税期間の初日は、開業日ではなく、その年の1月1日です。新規開業者の特例を利用する場合、開業した年の12月31日までに登録申請を行えば、課税期間の初日である1月1日から登録を受けることができます。ただし、登録年月日が1月1日となる場合でも、実際にインボイスを交付するのは、事業開始後の取引からです。
【出典:国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など】
【出典:国税庁 インボイス制度 申請手続】
令和9年・10年分は「3割特例」
令和9年分・令和10年分については、インボイス発行事業者の登録により免税事業者から課税事業者となった個人事業者を対象に、消費税の納付税額を売上税額の3割とする「3割特例」が設けられています。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが条件で、法人は対象外です。
ただし、インボイス登録以外の理由で課税事業者となる場合など、適用できないケースもあります。登録前に適用要件を確認することが重要です。
なお、これまでの「2割特例」は、令和8年9月30日までの日を含む課税期間で終了しています(個人事業者は令和8年分が最後です)。「2割特例を使えば消費税の負担は軽い」という古い説明を見かけたときは、現在の制度を確認してください。
【出典:国税庁 インボイス制度 2割特例】
簡易課税は「届出を出して初めて」使える
簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、届出をして初めて使えます。設備投資が多い年や、還付を受けたい年は、簡易課税を選ばないほうが有利になることもあります。機械的に選ばず、開業初年度の売上・投資の見込みをふまえて判断してください。
【出典:国税庁 No.6505 簡易課税制度】
千葉県への「個人の事業の開始等の報告書」も忘れずに
税務署への開業届とは別に、千葉県への報告書も必要です。
千葉県では、事業を開始した場合は、「個人の事業の開始等の報告書」を、事務所または事業所の所在地を管轄する県税事務所に提出するよう案内されています。千葉県の個人事業税のページでは、提出期限は事業を開始した日から1か月以内とされています。船橋市の事業者は、船橋県税事務所が提出先です。
2026年から税務署への開業届の期限は延びましたが、千葉県への報告書の期限は異なるため、注意が必要です。
なお、報告書を提出したからといって、必ず個人事業税が課されるわけではありません。個人事業税は、法律で定められた業種に該当する場合に、前年の事業所得から事業主控除額(年290万円)などを差し引いた金額をもとに課税されます。所得税の確定申告書を税務署に提出していれば、個人事業税の申告は、改めて必要ありません。
【出典:千葉県 新しく事業を始めたのですが、税に関する届出が必要ですか】
【出典:千葉県 個人事業税の申告書は、すべての個人事業者が提出しなければならないのですか】
【参考:千葉県 個人の事業税】
船橋市の償却資産の申告と市民税
船橋市には、開業届にあたる「市への開業の届出」は、基本的にありません。ただし、次の点は確認が必要です。
償却資産の申告(船橋市 資産税課)
毎年1月1日時点で、船橋市内に事業用の償却資産(機械、工具、器具備品、看板など)を持っている個人事業者は、その年の1月31日までに、船橋市へ申告する必要があります。たとえば2026年10月に開業して設備を購入した場合は、2027年1月1日時点の資産について申告が必要です。2027年1月31日は日曜日のため、実際の期限は翌開庁日の2月1日(月)になります。法人だけでなく、個人事業者も対象です。窓口、郵送のほか、eLTAX(地方税ポータルシステム)でも申告できます。
また、償却資産の課税標準額の合計が150万円未満で固定資産税がかからない場合でも、船橋市は申告をお願いしています。
【出典:船橋市 償却資産の概要】
市民税・県民税
事業所得がある方は、所得税の確定申告をすれば、市民税・県民税の申告は、原則として別途必要ありません。
税務以外の手続きも忘れずに
この記事は税務の手続きを中心に整理しています。開業時には、次のような手続きも必要になることがあります。
- 国民健康保険・国民年金の手続き(会社を辞めて開業する場合)
- 従業員を雇う場合の労働保険・社会保険の手続き
- 業種によっては、保健所や警察署などの許認可
窓口が異なるため、それぞれ確認が必要です。
開業前後に整えておきたい経理の準備
届出と同じくらい大切なのが、日々の記帳の準備です。
- 事業用の口座・カードを分ける:生活費と事業のお金が混ざると、記帳に手間がかかります。
- 領収書・請求書を保管する:開業前に支出した費用も、開業費として処理できる場合があります。
- 会計ソフトを選ぶ:青色申告の65万円控除を目指すなら、複式簿記に対応した会計ソフトが現実的です。
- 家事按分の考え方を知っておく:自宅を事業にも使う場合は、経費にできる範囲の整理が必要です。
→ 内部リンク:個人事業主の家事按分|経費にできる範囲と税務調査で否認されない考え方
→ 内部リンク:【弥生ユーザー向け】個人事業主・中小企業の会計ソフト選び|千葉県船橋市の税理士が本音で解説
税理士に相談したほうがよいケース
次のような場合は、開業前に一度ご相談いただくと安心です。
- 青色申告を選ぶか、現金主義を選ぶかなど、記帳の方法に迷っている
- 取引先が事業者で、インボイスの登録をするか迷っている
- 開業当初から、法人化も視野に入れている
- 金融機関から融資を受ける予定がある
- 家族に給与を払う、人を雇う予定がある
法人化のタイミングは、こちらの記事で解説しています。
→ 内部リンク:個人事業主はいつ法人化すべき?税理士が判断基準を解説
まとめ
個人事業の開業後に確認したい主な税務手続きは、次のとおりです。
- 開業届(2026年から、開業した年分の確定申告期限まで)
- 青色申告承認申請書(1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内。遅れると青色申告の特典を受けられません)
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(人を雇う場合。開設の日から1か月以内)
- 消費税・インボイスの方針決定(令和9年・10年分の3割特例も確認)
- 千葉県への「個人の事業の開始等の報告書」(事業を開始した日から1か月以内)
- 償却資産の申告(船橋市。毎年1月31日まで。休日の場合は翌開庁日)
どの手続きが必要かは、事業内容・雇用の有無・取引先の状況によって変わります。
丸山直哉税理士事務所では、個人事業主の開業後の税務手続きから、会計ソフトの導入、日々の記帳、確定申告までサポートしています。船橋・習志野・市川・千葉・鎌ケ谷を中心に、オンラインで全国のお客様にも対応しています。
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